カナダ・アメリカ文化比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール[2]

Vincent A. @ ELC Research International

 

 

独立戦争とカレッジスポーツの発達

フットボールはアメリカでカレッジスポーツとして発展しました。そのカレッジスポーツがアメリカで興隆した最大の要因は,アメリカが独立戦争(1775-1783)でイギリスに勝利したことです。実際,アメリカが独立戦争でイギリスに負けていれば,あるいは独立戦争そのものがなければ,アメフトが今日のような形で存在していたかどうか非常に怪しいのです。

アメリカが独立戦争で勝利した意義はとても大きく,その影響は単に政治的な面に留まらず,社会や人々の生活全般に,つまりアメリカ文化の様々な側面に深く浸透しました。そのひとつがアメリカの大学におけるカレッジスポーツの興隆であり,アメフトはそのカレッジスポーツの花形競技として発達したのです。

独立戦争開始の翌年(1776年)に発布されたアメリカ独立宣言は,人間は誰しも平等で,生命や自由を守り幸福を求める権利があると宣言しただけでなく,政府の権力は尊重するけれども,それは政府がこのような国民の権利を擁護するよう機能する限りであって,政府がその目的に適(かな)わない場合には国民は新しい政府を樹立できるとまで断言しています。このようにイギリス王制を完全に否定し,人間は誰しもが平等に幸福を求めることができるとする独立宣言の精神は,アメリカが独立戦争に勝利したことでアメリカ社会に徐々に広まっていきます。

そして,アメリカ社会に吹きわたる“自由の風”はアメリカの大学にも吹き込むようになり,大学当局や大学教員たちを戸惑わせることになります。なぜなら,当時のアメリカの大学は宗教宗派により設立されたものが多く,理事,学長,大学教員のほとんどが教会牧師で構成されていたからです。

 

 

大学・大学教員は基本的に学生たちを性悪とみなし,彼らに善の行動を刷り込み,悪の行動を消し去ることで彼らをより善く生きる人間に育てようとしていました。そのための教育方法が厳格な義務づけと行動規制です。授業の他にも自習が義務づけられ,宗教に関しては,宗教授業はもとより,朝夕2回の礼拝への出席が義務づけられていました。一方で寄宿舎生活の隅々まで規制がおよび,飲酒,喫煙,ダンス,カード遊び,遊びとしての運動,無断外出などが禁止され,違反者は厳しく罰せられました。加えて,大学の授業はギリシャ語・ラテン語の復唱授業が主で,暗記中心の学習を求められていましたので,学生たちにとって大学生活は息の詰まる抑圧生活に他なりませんでした。

その大学に“自由の風”が吹き込みます。自由の価値や人権意識に目覚めた学生たちは,自分たちを義務と規制で抑圧してきた大学教員たちに反抗し始めます。アメリカ各地の大学で学生騒動が起きましたが,その一方で,学生たちは自分たちで独自の活動を始めます。それが放課後の課外活動です。知的活動や社交活動などの“おとなしい”課外活動は独立戦争前にもありましたが,独立戦争に勝利した後は,肉体を駆使するスポーツ活動が学生たちの関心を集めるようになります。それがカレッジスポーツの原型となったのです。

 

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本稿はJaponism Victoria, vol.8 nos.2 and 3, 2013 に掲載された記事「文化比較考-カナダ・アメリカ比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール」に加筆修正をしたものです。

 

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カナダ・アメリカ文化比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール Ice Hockey vs. American Football[2]

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