文化比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール[7]

Vincent A. @ ELC Research International

 

 

アイスホッケーの起源については英文校閲者であるDavid Gordon-MacDonald氏から重要な示唆を得ましたのでご紹介します。

 

カナダのアイスホッケーは,元々は冬に村々の池や凍てついた裏庭にできる自然のリンクを使って行われた遊びです。このゲームは村の人々の遊びであると同時に,開拓者精神に富んだ荒々しく行動的な男たちの遊びでもありました。ですから,このゲームでは強靱な肉体を持っていることが重要な要素でした。

ホッケーは労働者たちのスポーツで,他のスポーツのように教養のある人々が規則作りに関与するようなことがなかったのです。例えば,同じように英国の労働者階級の遊びであったサッカーも,現在の競技規則の元となった最初の規定は英国貴族が作成したはずですが,残念ながらカナダの村人の遊びであり続けたアイスホッケーでは,そのようなことは起こらなかったのです。

アイスホッケーはカナダのノヴァスコシア(Nova Scotia)で始まったと言われています。ノヴァスコシアというのは19世紀の頃,スコットランド人が多く住む地域でした。彼らはシンティ(Shinty)という,フィールドホッケーに似た,スコットランドのハイランド地方で盛んだった遊びの一種として,アイスホッケーを,但し草の上ではなく氷の上で楽しんでいました。シンティで使うスティックは両側が平坦になっていて,アイスホッケーで現在使われているスティックによく似ています。しかし,スコットランドでも,シンティはもっぱらハイランド地方の人々遊び,あるいは都市部に移住したハイランド出身者が遊ぶゲームだったのです。

実際,このゲームの起源は,ハーリング(Hurling)という,ケルト人兵士の娯楽であったアイルランドのゲームによく似ています。スコットランドのシンティやアイルランドのハーリングのようなゲームは,元々,ケルト人兵士が戦いの合間に,身体がなまらないよう戦いを模して行ったスティックとボールを使ったゲームから始まったのです。アイルランドでは2000年近い歴史があるようです。

アメリカのカレッジスポーツの発展には大学教員たちが大きく関与してきましたが,このシンティにしても,アイスホッケーにしても,アカデミックな人々がその発展に関与することはありませんでした。現在,カナダの大学にもホッケーのプログラムはあるのですが,アカデミックな関与という点では,期待できそうにありません。

 

 

実は筆者はアイスホッケーの練習試合をリンクの脇で見た経験が1回だけあります。選手たちの動きや打ち込まれるパックの速さと衝撃,氷が削り取られる生の音などはテレビから伝わるものとはまったく異なり,強烈な迫力があります。アイスホッケーがカナダで絶大な人気を博しているのも十分うなずけるところです。

これだけ魅力があるスポーツなのですから,アイスホッケーは暴力行為がなくとも十分に楽しめるスポーツではないかと思います。そのことにカナダの人々にも早く気づいて欲しいと思います。アメリカにホッケーのモデルはなかったかもしれないけれど,大学教員たちの誠実な努力によって,死傷者が多発していた粗暴なスポーツから暴力行為がほとんど見られない洗練されたスポーツへと進化したアメリカンフットボールという見本があるのですから,カナダのアイスホッケーもぜひそれをモデルとして遅ればせながら近代化を目指して欲しいと思います。

 

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本稿はJaponism Victoria, vol.8 nos.2 and 3, 2013 に掲載された記事「文化比較考-カナダ・アメリカ比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール」に加筆修正をしたものです。

 

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カナダ・アメリカ文化比較:アイスホッケーとアメリカンフットボール Ice Hockey vs. American Football[7]

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