日本語で学ぶ[2]
内藤 邦彦 @バンクーバー日本語学校
◆補習授業校
前回の日本人学校のお話しのなかで述べましたように,現在,海外で暮らす義務教育段階の日本人の子どもは約6万人です。そのような子どもたちに日本人としての教育を行うための海外施設が,前回お話しした日本人学校とこれからご説明する補習授業校(補習校)です。
補習授業校は,日本人の子どもが現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)に通学しながら,土曜日や放課後などを利用して学ぶための施設で,日本国内の小学校・中学校の一部の教科について日本語で授業が行われます。補習授業校は日本人学校と同様に,現地の日本人会等により設置・運営されています。昭和33年(1958年)に米国のワシントンに設立されて以来,世界55カ国,201校の補習授業校が設置されており,約1万7千人の子どもたちが学んでいます。カナダBC州ではバンクーバーに,このほかアルバータ州,ノバスコシア州,オンタリオ州,ケベック州,サスカチュワン州に補習授業校が設置されていますが,ビクトリアにはありません。
補習授業校では国語を中心に,また施設によっては算数(数学),理科,社会などを加えた教科について,基礎基本を習得するための授業が日本の教科書を用いて行われています。補習授業校の年間授業日数は40日から50日程度のところが多く,教科書の内容を精選して指導しています。また,補習授業校は現地のいろいろな学校に通学している日本人の子どもたちが週に一度,一緒に会える数少ない機会でもありますので,日本の学校の学習習慣や生活習慣などを指導して,日本の学校文化に触れることのできる貴重な教育の場となっています。
設置目的・教育目的という面から考えると,補習授業校とは:
- 【教育対象】現地の学校に通学する児童生徒が
- 【教育目標】再び日本国内の学校に編入した際にスムーズに適応できるよう
- 【教育内容】基幹教科の基礎的基本的知識・技能および日本の学校文化を
- 【教育方法】日本語によって教育する
ための教育施設ということができます。
お子さんを補習授業校に入学させる時に親ごさんがこの設置目的・教育目的をよく理解されておられると,入学後にお子さんに無理な学習を強いるようなことがなくなるでしょう。
日本に帰国した後にお子さんが学校生活にスムーズに適応できるようにするためには,補習授業校での学習においてつぎ点を大切にされるとよいでしょう。
- 補習授業校の勉強・宿題をきちんとやる。
- 家庭内ではできるだけ日本語を使う。
- 家庭でも日本語の本を読む。
その際に,親ごさんもお子さんと一緒に補習授業校の勉強をしていくという姿勢がとても大切で,これはお子さんの学習状況を把握する上でとても役立ちます。
ここで補習授業校における教師について少しふれておきたいと思います。教育の質が教師の質に大きく左右されることはいうまでもありません。特に,国内に比して教育条件が十分ではない補習授業校においては,教師の果たす役割は極めて大きいといえます。日本から派遣される教師と現地採用の教師の調和も必要です。また,親ごさんがお子さんから学校生活の話をいつも聞くようにし,お子さんの話から親が教師についてよく知ようにし,教師とともにお子さんを温かく育てるようにすることが大切です。教師からお子さんの成長についての適切な助言を得られるような関係を作るようにしましょう。
最後に,私が補習授業校の教師であったとき心していたことをお伝えしたいと思います。
- 児童生徒には日本の学校で勉強するための基本的学習姿勢が身につくような指導をする。
- 授業がクラスみんなの積極的な参加によって成立するように指導する。
- 学習目標は家庭学習と教室学習との両立によって,それぞれの子どもに応じて達成できるよう指導する。
- 家庭との連携を図り,家庭は第二の教室と考え,保護者との信頼を第一とする。
- 児童生徒の学習の発展は,ひとりひとりの個性を見極めてこそ成り立つと心しておく。
次回は日本語学校についてお話します。
著者経歴:東京学芸大学教育学部数学科卒。日本女子大学附属豊明小学校教諭,バンクーバー補習授業校教頭を経てバンクーバー日本語学校主任教諭。
本稿はJaponism Victoria, vol.3, no.2, 2009掲載の同名記事に加筆修正をしたものです。著者経歴は執筆時のものです。